『先輩の背中を見て覚える』
当社は、専門商社を生業としております。
その中心業務は『営業』であり、中々標準化やマニュアル化が難しい職種になりま
す。また、マニュアル化された一辺倒な営業も面白くないので、個性を発揮できる良い
機会になっているのも確かです。
「俺の背中を見て覚えろ」「仕事を教わるなんて10年早い」「仕事は教わるものじゃな
い。盗むものだ」。最近の職場では、あまり聞かれなくなった言葉ではないでしょう
か??
近年は上司のOJT中心の指導から、新入社員・若手社員の価値観に合わせた業務のマ
ニュアル化や、人材育成システムの整備に取り組む企業が増加しているように感じます
が、この『営業』スタイルは、マニュアルやシステムでは、良いものが出来上がりませ
ん。
そう言った意味では、「背中を見て覚えろ方式」をビジネスの現場から無くしてしまっ
て本当によいのでしょうか?
柔道、剣道、空手、弓道といった武道の世界には『見取り稽古』という言葉がありま
す。師匠が弟子に指導するときに、手取り足取り教えるのではなく、師匠の技や、他の
人が行っている稽古や試合を見て学ばせる指導方法のことです。
これは職場で見られる、単純な「背中を見て覚えろ方式」ではありません。
見取り稽古のポイントは、一瞬の動きを捉える「集中力」と、細かな違いを見抜く「観
察力」であり、自分の身体を動かしたときの「想像力」、実践したときの「模倣力」が
必要になります。そして、これらの能力は、マニュアルやシステム化では身に付けるこ
とが難しい、近年の新入社員・若手社員に不足している能力ではないでしょうか?
ビジネスの現場での指導の仕方を、単純な「背中を見て覚えろ方式」では無く、この
『見取り稽古』方式に置き換えると、上司の仕事を見て覚えろと放置するのではなく、
部下には何を見て学び取って欲しいのか目的を伝えること、期待する行動を明確にする
ことが必要ではないかと愚考する次第です。
部下を成長させる最も効果的な方法は、上司自らが成長し続ける事だと思います。
自分自身が成長し続けているのか?
当社には背中を見せて教えることができる上司は何人いるのか?
考えさせられるところですが、努力を積み重ねていかなくてはいけませんね。
ホクショー商事(株) 村田麿基