稲盛和夫の経営哲学と脳科学
先日、ある人から『なぜ稲盛和夫の経営哲学は、人を動かすのか? ―脳科学でリー
ダーに必要な力を解き明かす―』と言う本を勧められました。著書は、脳科学者であり
医学博士である岩崎一郎さんという方です。
中々に理屈っぽく、難しい事も書いてありましたが、面白かった部分を抜粋して紹介
させていただきます。
稲盛和夫さんの功績は、既にご存知の方も多いと思います。
昭和34年に28人の町工場であった京都セラミック(現京セラ)を設立し、急成長させ、現
在では世界有数の優良企業に育てられました。
又、昭和59年には第二電電を創業し、電気通信事業の自由化に尽力されました。
更に、平成22年には、破錠直前だった日本航空(JAL)をⅤ字回復に導き、再上場させ
るなど、偉業はいくつも成し遂げてこられました。
稲盛経営のベースになっている考え方は、『京セラフィロソフィ』などに著されてい
ますが、「人間として何が正しいのか」と言う事です。利他の心で判断することが大切
であり、「心を高めていく事が経営を伸ばすこと」だと言っておられます。
著者の岩崎一郎さんは、『京セラフィロソフィ』をにわかには信じる事が出来なかっ
たそうですが、ある時脳科学の研究事例を調査中に、とても興味深い論文を見つけたそ
うです。
そこには、チベット仏教の僧侶が世界平和や人の幸せを祈る時に、脳の活性が普通の人
の何百倍にもなると書いてあったとの事でした。
本から直接の引用になりますが・・・、
人の幸せを祈っている時の心の状態が脳機能を変化させる。ひょっとすると、稲盛氏が
伝えようとしている事は、脳科学的な裏付けがある事では無いかと思うようになりまし
た。
人の気持ちを推し量り、思いやりのある行動をすると視野が広くなり、脳の回路が活
性化するという論文などが次々と見つかって来たのです。
特に驚いたのは、「集合知性」についてです。人々が心を一つにして同じ目的に向
かっていく時、集団としての知性が高まり、人類の叡智が発揮されるのです。この集団
知性によって、平凡な知性の人たちのグループが、天才知能を持つ人よりもはるかに高
いバフォーマンスを上げられる事も近年の科学的研究から明らかになってきました。
つまり、ベクトルを合わせる事は組織の活性化となり、ひいては経営の活性化に繋がるという事ではないでしょうか。
『京セラフィロソフィ』は、正に集合知性が発揮された状態を表しており、稲盛哲学
が、なぜ人々の心をそんなにも動かすのか、岩崎一郎さんも腑に落ちて納得することが
出来たと言っています。
愚考いたしますに・・・
利他の心で物事を判断する事、ましては経営判断を行う事は中々に難しい事だとは思い
ますが、実践してこられた大経営者が実存しているわけですから、私も少しは見習わな
くては、と思った次第です。
でも、しかし、これが難しい!!
日々の葛藤は続きそうです。
ホクショー商事㈱
村 田 麿 基